映画『ノーザン・ソウル』

画像『さらば青春の光』『トレイン・スポッティング』『24アワー・パーティー・ピープル』といった、英国のユース・カルチャーを描いた映画の系譜に、またひとつ傑作登場。
それがこの『ノーザン・ソウル』だ。

制作年度を見たら2014年と、ちょっと前。
テーマになっている“ノーザン・ソウル”があんまりメジャーでないせいか、日本では公開が見送られたままになりそうだったのを、“After School Cinema Club”という人たちが自主上映イヴェントを行なうことで注目され、晴れて劇場公開となったんだそうで。

で、ここで言う“ノーザン・ソウル”というのは、いわゆる“サザン・ソウル”と対比するアメリカの北部系ソウル・ミュージックのことではなく。
モッズたちに愛された、黒人音楽のレコードを聴いてクラブで踊る…というスタイルが、モッズ・ムーヴメント以降にイングランド北部で受け継がれて独自に発展したクラブ・カルチャーのことだという。
なので音楽自体はアメリカのノーザン・ソウルとは関係なく、レアで踊れるソウルなら何でもよかったらしい。
DJが自分の秘蔵レコードのレーベル面を隠して曲名などがわからないようにしていたというのは、アメリカのDJ文化でも見られたやつだ。


…というワケで、時代はパンク前夜の1974年。
グラム・ロックやプログレッシヴ・ロックが終わりに向かっていた頃だ。
舞台はイングランド北部の田舎町バーンズワース。
冴えない高校生のジョン(エリオット・ジェイムズ・ラングリッジ)は今でいうスクールカーストの、明らかに下の方。
カタブツの両親とも上手く行かず、八方ふさがりの青春。
高齢の祖父とはウマが合い、毎朝バスで見かけるかわいい黒人の看護師に心をときめかせるぐらいが数少ない楽しみ。

そんなジョンの生活は、両親に勧められてイヤイヤ出かけたユースクラブで一変する。
ユースクラブでは中年のDJが退屈なポップスを回し、それに合わせて学生たちがユルく踊ったりしていたのだが。
そこに、マット(ジョシュ・ホワイトハウス)という少年がDJに無理矢理頼み込んで回してもらったソウルのレコード。
そして、レコードに合わせて誰もが見たこともないような激しいダンスをするマット。
たちまちマットと意気投合したジョンは、マットの導きで“ノーザン・ソウル”の世界にのめり込んで行く。

髪型もファッションも洗練されたジョンだったが、やはり家庭にも学校にも居場所はなく。
愛する祖父の死をきっかけに家からも学校からも飛び出したジョンは、働いて金を稼いではレコードを掘りまくるという生活に突入。
ジョンとマットは、金を貯めてアメリカに渡り、デトロイトやシカゴでイギリスの誰もが知らないソウルのレコードを発掘してノーザン・ソウル界でトップDJコンビになる、という夢を描く…。


…以上が前半のおおまかなあらすじ。
もちろん夢はすんなりかなうはずもなく、ジョンとマットのレコード・コレクター&DJライフはドラッグや暴力や恋愛が絡みつつ七転び八起きあるいは七転八倒な展開で突き進む。
熱くて痛い、実に熱くて痛い青春。
その七転八倒ぶり、ハラハラしながらも実に面白い。

監督はコレがデビューとなるエレイン・コンスタンティン。
1965年生まれということなので、この映画の舞台として設定されている74年にはまだ9歳。
当然“ノーザン・ソウル”をリアルタイムで経験しているワケではないはずだが、映画には彼女の青春時代の実体験が織り込まれているという。

制作はかなりの低予算だったのではと思われるが、ファッションや車なども含めて、1974年をよく再現しているのには驚かされる。
今ではパブも全面禁煙となったイギリス…しかし映画の中では、登場人物たちは何処でもやたらと煙草を吸いまくっている。
(なんとレコード屋でシングルを掘りながらも吸っている)
それにしても当時のノーザン・ソウルって、ホントにあんなヒップホップみたいな踊りしてたのかしら…。

エリオット・ジェイムズ・ラングリッジとジョシュ・ホワイトハウスの二人も好演。
制作時点で既に二人とも20代半ば~後半だったはずだが、特にエリオットはダサダサな高校生ジョンが徐々に洗練されたノーザン・ソウル野郎になって行く過程を納得の演技で見せてくれる。
ジョシュ演じるマットの不遜な狂犬野郎ぶりも見モノだ。
あと、写真だとあんまりかわいく見えないヒロイン・アンジェラ役のアントニア・トーマスが、動いているととてもキュート。

上に挙げたようなイギリス映画が好きな人は必見の1本。
あと、モッズが好きな人とか、ガレージ寄りのいわゆるRAWソウルなんかが好きな人にもお勧め。
もちろんDJやってる人も。
2月9日(土)より、新宿シネマカリテ、神戸・元町映画館他にて劇場公開。


(C)2014 Stubborn Heart Films(Heart Of Soul Productions)Limited All Rights Reserved.

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