映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』

画像ここのところドキュメンタリー以外の音楽絡みの映画にも良作が続いている気がするが。
コレもとても良い。

ブルックリン郊外、鉄道も通っていない海辺の小さな街、レッドフック。
元ミュージシャンだったフランク・フィッシャー(ニック・オファーマン)は、シンガーだった妻に先立たれたことで音楽の道を諦め、レッドフックの街で17年間レコード店を営んできた。
一人娘であるサム(カーシー・クレモンズ)は秋からUCLAで医師を目指すことが決定していたが、彼女の学費を工面しようにもフランクのレコード店は赤字続き。
フランクは遂に店を閉めて他の仕事を探そうと決意する。

サムはUCLA入学前から医学の勉強に余念がなく、フランクの楽しみだった親子でのたまのジャム・セッションも御無沙汰だったが。
ある晩、半ば無理矢理サムを誘って久しぶりに行なわれたセッションで、イイ感じの曲が出来上がる。
フランクがサムに黙ってその曲をSpotifyにアップしたところ、人気を博してしまうのだった。
舞い上がるフランク。

しかしサムには医師になる夢があり。
一方で西海岸に移り住めば、恋仲になったばかりのローズ(サッシャ・レイン)とも離れ離れになってしまう。
夢見がちな父親に育てられたせいか、クールで現実的なサムだが、もちろんフランクのことを愛しているし、認知症が進む祖母マリアンヌ(ブライス・ダナー)のことも心配。

そうこうするうち夏も終わりに近づき、サムのUCLA入学も間近となる。
仕事に恋に勉強に…フランクにもサムにも、決断の時が訪れる。
二人は、そして周りの人たちは何を選び、どう生きて行くのか…。

…というのがこの映画のあらすじ。
甘みも酸味も苦みも辛みも、すべてがある映画だと思う。
フランクはシングルファーザーとして一生懸命サムを育ててきた人だが、経営の才覚はあまりなさそうで、それ以外の面でもけっこうなダメ男。
(冒頭から自分のレコード店内でスパスパ煙草を吸い、客に嫌がられる。この映画を観る喫煙者は苦笑いだろう)
一方でそれゆえにともいうべきかわいげのある、憎めない男。
トンビが鷹を生んだ(?)感のあるデキる子のサムも、やっぱりこのフランクの娘、と思わされる。
その二人が笑ったり怒ったり、悩んだり悩んだり悩んだり。
観ているこちらも笑わされたり、ほろりとさせられたり。
様々な形の喜怒哀楽が、丁寧に品よく盛り込まれている。

サムの恋人ローズは、サムと同じ女性。
二人はレズビアンということになるが、フランクは二人の関係を極めてフラットに受け入れる。
アメリカの話とはいえ、現実はそこまで簡単ではないのではと思われつつ、今という時代が反映された筋立てになっている。
その点、性的マイノリティがそれだけで話題やネタになる日本とは随分違うと思ったり。
そして50代半ばと思われるフランクにも恋バナがあり。
(そうですよ、人間は何歳になっても恋をするんですよ)

フランクの旧友であるマリワナ大好きなバー経営者デイヴ(テッド・ダンソン)や、レコード店が入る建物の大家であるレスリー(トニ・コレット)など、脇役陣も強力、かつ好演。
(テッドはむしろ怪演)
フランクの母、サムの祖母であるマリアンヌ役のブライス・ダナーも、“まだらボケ”の美人なおばあちゃん(元は歌手だったという設定)を魅力的に演じている。

で、音楽。
フランクとサムの楽曲がSpotifyで人気となるからには、その楽曲が本当に魅力的でなくては説得力がない。
その点、音楽を担当したキーガン・デウィットが作曲した劇中歌の数々が実に素晴らしい。
そしてミュージシャンでもあるカーシー・クレモンズが、キーガンの楽曲を説得力ある歌唱で歌い上げている。
(フランクとサムの演奏シーンでは、ニック・オファーマンとカーシーが実際に演奏して歌う)

フランクやデイヴやレスリーの年代(50代)の人にもサムやローズの年代(20歳前後)の人にも、その中間(30~40代)の人にも響く映画だと思う。
世代に限らず、ロックの好きな人には絶対お勧め。
(フランクのレコード店、壁面に飾られた名盤の数々に目が行くはず)

宣材を見ても、配給サイドのこの映画に対する愛情と熱意が伝わってきてイイ感じ。
6月7日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ他で公開。


(C)2018 Hearts Beat Loud LLC

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