GURU GURU/KANGURU(1972)
俺は70年代の国内盤LP(1989年頃購入、5500円ぐらいした…)と90年代の国内盤CD、2009年SPV盤のCDと、3枚持っている。
(アホか…それでも各4~5枚ずつ持っているAMON DUUL Ⅱよりはまし)
SPV盤CDが国内配給された時には、俺がライナーノーツを担当した。
90年代にこのあたりのドイツ勢が改めて日本で注目され始めた頃、その大半は当時流行の“モンド”的な文脈に基づく評価で、俺は当時そういう解釈が我慢ならなかったので、改めて自分がライナーを書くことになってえらく発奮したのを覚えている。
それはさておき…ほとんど楽曲の体を成さない重轟音が蠢き続ける『UFO』(1971年)、全員弾きまくり叩きまくりの超絶手数ロックを聴かせる『HINTEN』(71年)に較べると、よく影が薄いとか地味だとか言われるアルバムだが、GURU GURU史上においてはけっこう重要な1枚。
何しろ後々までライヴのレパートリーとなる「Ooga Booga」収録。
『UFO』も『HINTEN』も確かに凄い。
しかし最初期のトリオの楽曲で、マニ・ノイマイアー(ドラム)以外の全員が交代しても演奏され続けた代表曲は結局「Ooga Booga」1曲しかない。
『UFO』ほどのヘヴィネスも『HINTEN』ほどの弾きまくりもない一方で、GURU GURUは『KANGURU』で初めてまともな(?…いや、まともではないか)ヴォーカルが入った曲を演奏するようになる。
初期のトリオでは『UFO』と『HINTEN』の楽曲をライヴでも演奏していたとはいえ、初期GURU GURUは基本的に楽曲というよりもよりも“3人での演奏それ自体”に依存した方向で活動していた。
(何しろリズム・セクションが二人ともフリー・ジャズ出身)
演奏する人間の顔ぶれが入れ替わることにより、『UFO』と『HINTEN』の楽曲がライヴで演奏されなくなることは必然だったと言える。
一方『KANGURU』では『UFO』のようにとんでもなく重い轟音を垂れ流すこともなく(とはいえ「Immer Lustig」中間部の演奏などはかなり『UFO』当時に近いが)、『HINTEN』のような凄まじい手数とスピード感で圧倒することもなく、GURU GURUは彼らなりに(あくまでも彼らなりに)ヴォーカルの入った“楽曲志向”とも言うべき方向性を初めて聴かせるようになったのだ。
(その後のGURU GURU/マニ・ノイマイアーが聴かせるエスニック志向もこの曲で初めて登場)
そして「Ooga Booga」は、以降のGURU GURUのライヴ音源で「Ooga Booga Special」として聴けるようになる。
ウリ・トレプテ(ベース)が抜けた次作『GURU GURU』(1973年)ではまだアクス・ゲンリッヒがキテレツなギターを聴かせているものの、「Der Elektrolurch」がこれまた代表曲としてライヴのレパートリーに残ったのも、特徴的なイントロに導かれて印象的なメイン・リフがあり…という楽曲としての良さ、キャッチーさがあったからだろう。
ただしそれは米英のロックとはまるっきり違った地平にあったGURU GURUの特異過ぎるロックが次第に“普通”のロックの土俵に近付いていくことでもあり、その後の失速を招く遠因でもあったかも知れない。
とはいえここでのGURU GURUは、やっぱりフツーのロックなどとは程遠い。
『HINTEN』と同様、全曲が10分越えの4曲入り。
ヴォーカルが入ったとはいえ、まともにメロディを追うようなモノではまったくなく。
長いインストゥルメンタル・パートでは、『HINTEN』ほど派手ではないものの超キテレツな演奏が炸裂する。
特にやはりというかアクス・ゲンリッヒ。
もの凄く不器用なジミ・ヘンドリックスとでも言いたくなる、決定的に何かが欠落しているが故の変幻自在さ、みたいな。
(ギターが弾ける人なら上手く説明出来るのかも知れない。以前何処かでアクスのことを下手と断言している人がいた)
今も改めて繰り返し聴いてるけど、なんだろうなこの人、相当おかしいぞ…。
そしてアクス・ゲンリッヒとマニ・ノイマイアーの大暴れを意外と堅実にバックアップする、ウリ・トレプテの妙にブルージーなベース。
この人はGURU GURU脱退後に「なんとかBlues」みたいな曲をやたらと書くようになるが、その萌芽はこの頃から見えていたとも言える。
何よりこの人、マニ・ノイマイアー。
日本では70年代から90年代に至るまで、GURU GURUの音楽には常に“ブラック・ユーモア”という言葉が付いて回ったモノだが、90年代後半以降マニ本人が来日を重ねたことで、いやこのおっさん実はブラックじゃなくてユーモアそのものじゃん、というということが明らかになり。
つまりは超絶技巧の限りを尽くして真面目にふざけまくる。
このアルバムの裏ジャケで楽しそうに飛び跳ねるマニの姿も、深読みしないで笑って眺めるべきだろう。
俺が持っている『KANGURU』のLPには、何度目かの来日時にマニ・ノイマイアーにサインしてもらったのだが。
そのサインは、裏ジャケのマニさんの股の間に書き込まれている。
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