THE DICTATORS/MANIFEST DESTINY(1977)
俺がこのアルバムのことを知ったのは、BURRN!の70年代特集みたいな企画でだったと思う。
アンディ・シャーノフ(ベース、ヴォーカル)、ロス・ザ・ボス(リード・ギター)、スコット”トップ・テン”ケンプナー(リズム・ギター)、ステュ・ボーイ・キング(ドラム)の4人でエピックから1stアルバム『GO GIRL CRAZY!』をリリースしたTHE DICTATORS。
しかし70年代半ばのニューヨークに60年代の西海岸サーフ・ミュージックやポップスの影響を持ち込み、ハード・ロック的なギターで味付けした彼らのサウンドは、当時理解されず。
一説には、『GO GIRL CRAZY!』は6000枚しか売れなかったという。
バンドはエピックとの契約を失い、ステュもいなくなった。
THE DICTATORSは新たに、歌えるドラマー、リッチー・ティーターを加入させ。
一方で、何を思ったのかメイン・ソングライターのアンディ・シャーノフはベースからキーボードにコンバート。
新しいベーシストとしてマーク”ジ・アニマル”メンドーザが参加。
そして、『GO GIRL CRAZY!』では”秘密兵器”とクレジットされて一部の楽曲で歌っていたローディ―上がりのハンサム・ディック・マニトバが、バンドの正式なシンガーとなり。
そうして6人組となったDICTATORSはアサイラムとの契約を得て、2ndアルバムをリリースしたのだった。
大都会の書割をバックに、ポーズをキメる6人。
ダサい。
アフロが二人。
ツーバスのでっかいドラムセットに囲まれたリッチー・ティーターはハード・ロック然としている。
(もちろんロス・ザ・ボスも)
アンディ・シャーノフのジーンズはベルボトムだ。
パティ・スミスと同じ年にアルバム・デビューを果たしてニューヨーク・パンクの先鞭をつけたバンドとは信じがたいヴィジュアル。
(当時の国内盤LPの邦題は”ハード・ロック狂騒曲”)
中身も然り。
ハンサム・ディック・マニトバが専任シンガーになったはずなのに、ドラマーのリッチー・ティーターが2曲も歌っていて。
(2曲ともバラード調)
もちろんアンディ・シャーノフも歌う。
全9曲のうちバラード調の曲が2曲もあって、何曲かはなんだか産業ロックっぽく聴こえる。
一方で「Disease」のように下降するダークなギター・リフをフィーチュアした、ダークなハード・ロック風の曲もあり。
キーボード・ソロの入るアレンジは、先輩格BLUE OYSTER CULTのようでもある。
アンディとバンドは当時何処を目指していたのだろうか。
アナログB面がリッチー・ティーターの歌うソフトなバラード「Hey Boys」で始まり、曲はイイんだけどなんだかこれじゃない感が…と思っていると、その後4曲でようやく痛快なR&Rが展開される。
スローに始まり、パワー・ポップとハード・ロックの中間みたいなキャッチーで疾走感のある演奏に転じる「Steppin' Out」。
THE DICTATORS版「Godzilla」とでも言うべき「Science Gone Too Far!」(しかしBLUE OYSTER CULTの「Godzilla」と違ってこちらはすっ飛ばすハードR&R)。
”R&Rが俺を男にしてくれた”と繰り返される「Young, Fast, Scientific」。
そしてアルバムの最後は、IGGY AND THE STOOGESカヴァー「Search & Destroy」で締められるのだった。
それにしても、こんなにあっけらかんと歌われる「Search & Destroy」が他にあるだろうか。
”俺は世界に忘れ去られた子供/探し出しては壊すのさ”なんて歌を、大歓声をかぶせたスタジアム・ライヴ風に…。
このアホっぽさこそが、THE DICTATORSの味なのだが。
そしてもちろん、本当にアホだったらこんなアルバムは作れない。
6人編成のTHE DICTATORSはこの1枚きりで終わり。
マーク・メンドーザがTWISTED SISTERへと去り、アンディ・シャーノフはベースに戻る。
3rdアルバム『BLOODBROTHERS』(1978年)がシャープなハードR&Rでまとめられていたのは、この2ndアルバムがややとっ散らかった感じになってしまった反省に基づいていたのかも知れない。
かと言って『MANIFEST DESTINY』が駄作なワケではない。
コレはコレで、良い曲がたくさん入っている。
2002年に国内盤CDが出た時にはライナーノーツを担当させてもらった。
(『BLOODBROTHERS』も)
もう19年前の話だ。
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