MC5/DO IT(1987)
珍盤。フランスのリヴェンジ・レコーズから発掘リリースされた、MC5のライヴ音源。
1971年、デトロイトのMY FAIR LADYでのライヴで、メンバーはもちろんロブ・タイナー(ヴォーカル)、フレッド“ソニック”スミス(ギター)、ウェイン・クレイマー(ギター)、マイケル・デイヴィス(ベース)、デニス・トンプソン(ドラム)の5人。
「Back In The U.S.A.」「Looking At You」「Tutti Frutti」といった収録曲からも2ndアルバム『BACK IN THE USA』(70年)リリース後のライヴと思われ。
更に「Rock'n'Roll Pips」「Unknowed Rock」という未発表曲、THE ROLLING STONESのカヴァー「19th Nervous Breakdown」も含み。
音質は良好。
演奏は『KICK OUT THE JAMS』(1969年)に較べると軽く。
『KICK OUT THE JAMS』収録曲のアレンジもかなり違っている。
『BACK IN THE USA』のサウンドからしても、当時のMC5のライヴはこんな感じだったのだろうなと納得出来た。
ともあれリリース当時はかなり話題になった。
レコードコレクターズの1987年のリイシュー盤ベスト10にも入っていたし。
ところが。
5年後に全部ひっくり返る。
1992年にアメリカのレーベル・NKVDからリリースされたROB TYNER BANDのライヴ盤『DO IT』が、87年にMC5名義で出た『DO IT』と同じ内容だったのだ。
ROB TYNER BAND、1975年の演奏だという。
…未発表曲の存在も、アレンジやサウンドの違いも、THE ROLLING STONESのカヴァー(ロブ・タイナーはMC5のメンバー中で一番のSTONESファンだった)も、すべて合点が行った。
『DO IT』は、MC5の未発表ライヴ音源なんぞではなかったのだあああああ。
リヴェンジ盤の『DO IT』には、プロデューサーとしてデニス・トンプソンの名前がクレジットされていたというのに…。
(NKVD盤『DO IT』のプロデューサーはロブとなっていたが、ロブは91年に亡くなっているので、このクレジットも疑わしい)
ただし、この『DO IT』をMC5のライヴと言ってしまうことは不可能ではない。
…というか、このライヴは確かにMC5のライヴではあったのだ。
MC5は1972年に解散していたが、その後ロブ・タイナーがやっていたバンド(つまりROB TYNER BAND)は、大人の事情(笑)でMC5を名乗っていたのだった。
実際このアルバムでも、冒頭のMCで思いっきり“MC5!”とコールされている。
なので、コレをMC5のライヴと言うのは、間違いとは言い切れないのだった。
実際、内容は悪くない。
オリジナルのMC5に較べれば確かに軽い感じの演奏だが、何しろロブ・タイナーが往年のレパートリーを歌いまくっているのだから、以前紹介したロブ抜きのMC5のブート『KICK COPENHAGEN』に較べてもむしろMC5っぽいとさえ言える。
「19th Nervous Breakdown」もかなり出来の良いカヴァーだと思う。
オリジナルのMC5解散後、自身のバンドでMC5の名前を使い続けたのはウェイン・クレイマーが先だった。
ウェインが塀の向こうに行った後にMC5を名乗った(名乗らざるを得なかった)ロブ・タイナーのバンドは、いわば“三代目MC5”。
MC5という看板の大きさ、そして呪縛の大きさを思わずにいられない。
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